福島ご当地エネルギー宣言

福島ご当地エネルギー宣言

— 地球の未来のために —

福島原発事故から5年目、そしてパリ協定が発効した本日、福島市にて開催された第1回世界ご当地エネルギー会議(2016年11月3〜4日)に30カ国以上から600名を越えるすべての参加者は、この宣言に合意しました。

私たち参加者一同の共通認識として:

  • 持続可能なエネルギーの供給と利用は、社会生活の質を維持し高めていく上で、また、世界のすべての人々の持続可能な発展にとって必要不可欠である。
  • 気候変動は、現在世代にとっても前代未聞の状況を生み出しつつあり、将来世代にとってはより大きな脅威となる。
  • 福島原発事故の教訓は、壊滅的な原子力のリスクを考慮する必要性を教えてくれている。
  • 本質的にクリーンで、永続的で、枯渇することがなく、世界のあらゆる場所で利用できる風力発電や太陽光発電といった自然エネルギーが世界的に急増する転換点に立っており、私たちは100%自然エネルギーの未来を達成する機会を手に入れている。エネルギー効率化とあわせて、それにより、私たちは、化石燃料や原子力に起因する気候リスク、原子力リスク、供給安全保障リスク、大気汚染やその他の危険を回避することができる。
  • それを達成するため、持続可能な自然エネルギーを実践する際には、地域のニーズや優先順位に加え、既存の社会・文化・環境の状況に配慮しなければならない。つまり、「ご当地エネルギー」(コミュニティパワー)の原則に倣うということである。
  • 「ご当地エネルギー」の原則とは、自然エネルギー導入の計画から設置、運営において、地域コミュニティとその担い手が民主的に参加し管理すること、そして地域コミュニティとその担い手が経済的・社会的便益の多くを得ることが必要となる。

私たち参加者一同は、世界風力エネルギー協会が2016年3月22日に発表した調査報告「ご当地エネルギー世界戦略10項目」(添付資料を参照)を再確認し、発展させてゆくことを確認した上で、以下の行動にコミットします:

  • 世界中でご当地エネルギーが将来の自然エネルギー供給の有力なかたちとなるように行動をおこす
  • 世界中でご当地エネルギーがいっそう増えてゆくためのグローバルな機運をつくり続け、「世界中とネットワークして、地域で実践する」を実践する
  • 地域、国、世界といった社会のあらゆるレベルでご当地エネルギーのネットワークを強化する
  • 優れたビジネスモデルや政策を含む、世界のご当地エネルギーの状況について情報交換を進める
  • 地域の自然エネルギー基本計画を定義するため、地方自治体との協働に重点的に取り組む
  • この宣言の中で指摘された必要となる枠組み条件をつくり出すように、各国の政府に働きかける
  • 世界のエネルギー転換の国際的な議題おいて優先度が高い戦略としてご当地エネルギーを取り上げるように、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、ユネスコ(UNESCO)、気候変動に関する国際連合枠組条約事務局(UNFCCC)やその他の国際金融機関と協働を進める
  • 特に、開発途上国でのご当地エネルギーの取り組みを推進し、必要となる技術や社会的・金融的なノウハウの移転を促進する
  • 福島市での第1回世界ご当地エネルギー会議を、世界のご当地エネルギープロセスの出発点とし、ネットワークの発足と、次回に予定しているアフリカ・マリでの世界ご当地エネルギー会議の次回開催へとつなげる

2016年11月4日 パリ協定発効の日に、福島第一原発事故から5年目の福島市において

開催地ホストとして小林香福島市長により読み上げられ、すべての参加者を代表して以下の3つの主催団体はこれに署名する:

佐藤彌右衛門、一般社団法人全国ご当地エネルギー協会
飯田哲也、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所
ステファン・ゼンガー、世界風力エネルギー協会


PDFはこちら

添付資料:ご当地エネルギー世界戦略10項目

世界風力エネルギー協会 調査報告「Community Wind threatened by discriminating policies (2016年3月22日) 」をもとに世界ご当地エネルギー会議2016参加者による加筆

  1. ご当地エネルギー(コミュニティパワー)は、2015 年パリ協定で定められたエネルギーシフトの成功に欠かせない推進力であり、前提条件である。
  2. ご当地エネルギーは、地域の持続可能なエネルギーの生産によってもたらされる便益と利点の公平な分配を可能にし、特に開発途上国で地域の付加価値を高めることに貢献する
。
  3. ご当地エネルギーは、エネルギーデモクラシーを促進させることで、自然エネルギーの生産への受容性を高めて、エネルギーシフトに関する社会的な支持を向上させる
  4. コミュニティパワーのプロジェクトは、排他的ではなく、すべての関係者が等しく市場にアクセスできるものでなければならず、独占的な市場構造は制限されなければならない。
  5. 買取り価格が保証されている FIT(固定価格買取制度)は、とりわけご当地エネルギーのような小さな参加者に市場への公平なアクセスの機会を保証し、自然エネルギーのダイナミックな成長を刺激する最も優れた政策手段であることが証明されている
。
  6. 自然エネルギーを既存のエネルギーシステムに統合するとともに、ご当地エネルギーの潜在力と好影響を有効に活用できるような、さらに発展させた政策と市場が必要である。
  7. ご当地エネルギーは、自然エネルギーの分散化と地域への統合などを通じて、100%自然エネルギー社会の実現に向けて中心的な役割を果たす。
  8. 自然エネルギー100%の電力供給、輸送の電気自動車化(e-モビリティ)、省エネサービス、冷暖房とエネルギー貯蔵を含む、ご当地エネルギーの将来的なビジネスモデルを推進する。
  9. ご当地エネルギーに関わるステークホルダーは、地域社会・地方・国・世界におけるネットワークと協力関係を発展させて、政治的な発言力も高めていかなければならない。
  10. 開発途上国におけるコミュニティパワーは、緑の気候基金(Green Climate Fund:  GCF)等で最重要課題として位置づけられている地球規模のFIT プログラムとマイクロクレジット(小口金融)プログラムの枠組みを活用して始動し、強化することができる。